Strum GSは、Keyboard、Guitar、Loopの3種類の演奏モードで使用できます。演奏モードは、インターフェースのPlay view左下にあるPlay Modeボックスの対応するボタンをクリックして選択します。本章では、各モードの動作としくみ、モードごとに用意された特殊なキーボードレイアウトについて解説するとともに、Guitar modeおよびLoop modeにおけるコードボイシングの各種オプション、具体的なギター奏法テクニックの実現方法についても取り上げます。
自動コードボイシングを行わない、最もシンプルな演奏モードです。鍵盤で弾いた音がそのままギターの音として鳴り、Strum GSは音やコードのボイシングを一切行いません。通常の鍵盤楽器との主な違いは音域で、Strum GSはモデリングされたギターの各弦上に音を配置する都合上、ギター本来の音域――中央Cの2オクターブ下のE(MIDIノート40)から中央Cの3オクターブ上のA(MIDIノート93)まで――の音にのみ反応します。
Keyboard modeは、メロディや音程(インターバル)を演奏できる唯一のモードであり、リードギターの演奏に使用されます。また、Strum GS側でボイシングを行わずにコードを弾けるため、弾き方を自分で完全にコントロールすることも可能です。
Keyboard modeでは、半音~全音(1~2半音)離れた音をレガートで弾くと、自動的にハンマリングオンやプリングオフが発生します。ハンマリングオンとプリングオフは、ギター奏者がレガートや装飾音を演奏する際に用いる奏法です。ハンマリングオンは、まず1つの音をピッキングした後、同じ弦のより高いフレットに別の指を打ち付けることで得られる効果です。プリングオフはハンマリングオンとはほぼ逆の奏法で、まず1つの音をピッキングした後、指を弦から鋭く弾くように離すことで、同じ弦上の別のフレット音を鳴らします。これらの奏法で得られる音は、通常のピッキングで弾いた音に比べて柔らかく、打楽器的な要素の少ないアタックになります。

Guitar modeでのMIDIキーボードのセクション区分
鍵盤を「コードキー(運指手側)」と「ストラミングキー(ピッキング手側)」の2ゾーンに分割します。コードキーはMIDIノート40~71(中央Cの2オクターブ下のEから1オクターブ上のBまで)、ストラミングキーはMIDIノート72~83(中央Cの1オクターブ上のCからBまで。左手でも操作できるよう3オクターブ下の36~47にも同じ機能が重複配置されています)。




オートマチックコードの例(Cキーの場合)
3音以上を同時に押鍵するとコードとして検出されますが、Strum GSでは2音までの押さえ方だけでも次のようなコード種別を自動生成できます。

Guitar modeでのストラミングキー配置

ストラミングキーによるCコードのダウンストローク / アップストローク

交互のダウンストロークとパームミュート

ストラミングキーによるスクラッチ奏法
12個の専用キー(C~Bの1オクターブ分)には、それぞれ次の機能が割り当てられています。
ボイシングで使用する弦が6本に満たない場合、使われていない弦に対応するアルペジオキーには、そのコードの最低音か最高音かに応じて、隣接する弦の音が繰り返し割り当てられます(例えば5~1弦を使うボイシングでは、5弦の最低音がアルペジオ6のキーにも割り当てられます。6~2弦を使うボイシングでは、2弦の最高音がアルペジオ1のキーにも割り当てられます)。ただし4弦のみを使うボイシングの場合は例外で、4弦の音がアルペジオ6と5の両方のキーに、1弦の音がアルペジオ2と1の両方のキーにそれぞれ割り当てられ、2・3弦の音はアルペジオ3・4のキーに移動します。これにより、コードの最低音は常にアルペジオ6のキーに割り当てられ、かつアルペジオ4・3・2のキーには常に異なる音が割り当てられるため、どのボイシングタイプでもアルペジオパターンを弾きやすくなっています。

シンプルなストラミングシーケンスの例
「Auto」ボタンをオンにすると、コードキーを押した瞬間に自動でダウンストロークが発生し、ストラミングキーを別途操作する必要がなくなります。オフの場合は、コードキーでボイシングされた状態を保持しつつ、実際に弦を鳴らすにはストラミングキーの操作が必要です。なお、Auto設定に関わらずストラミングキー自体は常に有効です。
コードキーでコードを弾くと、そのコードが検出・ボイシングされ、ストラミングモジュールからダウンストロークがトリガーされて低音弦から高音弦へ順に発音されます。弦をミュートせずに新たにダウンストロークを再トリガーしたい場合は、コードを構成する音のうち1音を一度離してもう一度弾き直すだけで実現できます。

ダウンストロークの再トリガー

滑らかなコードチェンジ
押さえているコードは、そのコードを構成する音をすべて離すまで保持されます。共通する音を押さえたまま音を追加・入れ替えると、滑らかなコードチェンジ(スムーズトランジション)ができます。この場合、新しい音を追加するか、あらためてストラミングキーを弾かない限り、コード検出は再トリガーされません。
一方、コードから1音だけを外したい場合(例:C7コード〈C-E-G-B♭〉からB♭を外してCコード〈C-E-G〉にする場合)、単にB♭を離すだけでは不十分です。コード検出モジュールを再トリガーするには、B♭を離すことに加えて、ストラミングキーを弾くか、あるいは他のコード構成音(例えばG)を一度離してから弾き直す必要があります。
鍵盤上でオクターブを変えて弾いても、Strum GSがフレットボード上のどの位置でコードを鳴らすかには影響しません。Strum GSは常にできるだけ低いポジションでコードを弾こうとしますが、VoicingモジュールのPositionパラメーターでフレット位置が指定されている場合は、そのフレット以上の位置でコードを弾こうとします。唯一の例外はDrop Chordsを使用している場合で、この場合はPositionパラメーターの設定に関わらず、直前のコードのポジションにできるだけ近くなるようボイシングされます。

Loop modeでのMIDIキーボードのセクション区分

Loop modeでのストラミングキー配置
コードキー(MIDIノート40~71)はGuitar modeと共通です。各Strum GSプリセットには、「ループパック」と呼ばれる7つのMIDIループが1セットになって保存されています。Loop Keysセクションの白鍵7つ(MIDIノート72~83のC~B。左手用に3オクターブ下の36~47にも同機能を重複配置)は、このループパックに含まれる7つのループのいずれかをトリガーします。ループパックはPlay viewのLoopsモジュールから読み込むことができます(5.2.8節)。現在選択されているループは、Loop Keysセクションの紫色のキーで示されます。
ループはコードキーを離すか、停止用のキーを弾くまで鳴り続けます。B♭(ノート82)を弾くと全弦ミュートで即座に停止し、C(ノート84)を弾くと自然減衰しながら停止します。
ループ再生をより表現力豊かにするため、Strum GSでは2つの異なるMIDIコントローラーを、演奏の強弱、テンポ、ストラム幅(弾く弦の範囲)、高音弦 / 低音弦の強弱バランスといったパラメーターに割り当てることができます。このモジュレーションマトリクスにアクセスするには、インターフェース上部にあるMIDI LEDのすぐ下のMIDIボタンをクリックしてMIDI設定ウィンドウを開き、「Live MIDI Loop Control」セクションでコントローラーをエフェクトに割り当てます。
独自のMIDIループを作成する場合、次の条件を満たす必要があります。
より自然なループを作成するためのコツとして、次のような点が推奨されています。ストラミングキーのベロシティは、再生ごとに多少ばらつきを持たせることで、より生き生きとした結果が得られます。ループが短い場合は、同じパターンを繰り返し配置しつつ、繰り返しごとにベロシティを変えておくとよいでしょう。コードを含める場合は、必ずしっかりクオンタイズし、同じタイミングに必ずストラミングキーを配置してください。これにより、Auto-Strumモードがオンの状態でループを再生した際に、意図しないストロークが発生するのを防げます。また、ピッチホイールやホールドペダルなど、効果の意味が演奏者側の設定によって変わりうるMIDIコントローラーの使用は避けてください(ピッチホイールはベンドにもスライドにも使われる可能性があり、ホールドペダルはコードを保持する用途にもオルタネイトストロークをトリガーする用途にも使われる可能性があるためです)。
ギターでは同じコードでも弾き方(ポジション)が何通りもあり、それぞれ響きが異なり、適した音楽ジャンルも異なります。Strum GSがコードに対して選ぶ具体的なボイシングは、インターフェースのChordセクションにあるTypeパラメーターの設定によって決まります。次の4種類から選択できます。
Movable Chords、PowerchordsではPositionパラメーターで最低音のフレット位置を指定できます(Open Chordsには適用されません)。Drop Chordsは、このPositionパラメーターではなく直前のコードのポジションにできるだけ近くなるようボイシングされるため、Positionの設定の影響を受けません。また、Voicing inverseの設定により最低音の扱いが変わります。「Lowest」では、鍵盤で弾いた音のうち最も低い音がそのままギターボイシングの最低音になります。これはコード進行のベースラインに特定の動きを持たせたい場合に便利ですが、Open ChordsおよびMovable Chordsでは、面白みのあるボイシングにならない転回形も多いため、その場合Strum GSが生成する4音ボイシングがコード進行の中でやや不自然に響くことがあります。「Root」では、コードのルート音が常に最低音になります。ギターコードはルート音が低音位置にあることが一般的なため、この設定を使うと、鍵盤上ではどんな押さえ方(転回形)で弾いても、ギター上では常にルートポジションのコードとして鳴らすことができます。5thの音は基本的に常に含まれますが、Drop Chordsでは鍵盤上で実際に押さえた音のみが使用されるため、5thが含まれないこともあります。
ジャンルの目安として、フォークにはOpen+Root(中速)、カントリー / ブルーグラスにはOpen+Root(速め)、ポップ・ロックにはMovable+Root、ベースの動きを伴うアルペジオにはMovable+LowestまたはOpen+Lowest、ジャズにはDrop Chords、サンバ・ボサノバにはDrop Chords(アルペジオ6キーでベースを弾き、アルペジオ4・3・2キーを同時に弾いて残りのコードを鳴らす)、ファンクにはMovable+Root(高いポジション)、フラメンコにはOpen+Root(速いストロークで高音側4弦を交互に弾く)が挙げられています。
ここからは、より凝った効果を得るための奏法を紹介します。以下の例は、いずれもGuitar modeを使用し、ストラミングキーを使うためAuto-Strumモードはオフにしていることを前提とします。この弾き方は、ギター奏者としての感覚により近い考え方が必要になります。コードが鍵盤上で完全に構成される前にストラミングキーを弾いてしまうとノイズが生じることがあるため、ストロークをトリガーする直前にコードを押さえておくとよいでしょう。これはちょうど、ギター奏者がピッキング手でストロークする前に、運指手をフレットボード上にセットしておくのと同じです。

シンプルなアルペジオの例

ベースモーションを伴うアルペジオ
個別弦アルペジオキー(E, F, G, A, B, C)を使うと、コードを1音ずつ順番に発音するアルペジオが弾けます。どのキーがどの音を弾くかは、3.2.2節で説明した通り、Strum GSが鳴らしているコードによって変わります。多くのコードは4弦(ベースと高音側3音)のみを使用するため、アルペジオ2とアルペジオ1のキーが同じ音を弾くことも珍しくありません。また、コードがフレットボード上のどの位置にあるかによって、オルタネイトベースキー(アルペジオ5)はベースキー(アルペジオ6)より低い音、高い音、あるいは同じ音を弾くことがあります。そのため、実用上よく使うのはアルペジオ6・4・3・2(E・G・A・B)のキーになることが多いです。アルペジオを弾く際は、親指でベース、人差し指でアルペジオ4、中指でアルペジオ3、薬指でアルペジオ2、小指でアルペジオ1を弾くとよく、これはギター奏者の指使いに近い形になります。
簡単な例として、左手でCコード(C-E-G)を押さえ、右手でBass(E)、アルペジオ4(G)、アルペジオ3(A)、アルペジオ2(B)の順にキーをトリガーしてみてください。
アルペジオを弾く際にMovable-Lowestのコードタイプを使うと、ベース音の動きを伴うアルペジオを作ることができます。これを試すには、ChordセクションのTypeを「Movable-Lowest」に設定し、C(C-E-G)→CMaj7/B(B-C-E-G)→C7/B♭(B♭-C-E-G)→Am7(A-C-E-G)というコード進行で、上記のアルペジオパターンを弾いてみましょう。
この奏法は、ハンマリングオンとプリングオフを使って2つの音を素早く切り替えるものです。トリルはKeyboard modeで使用でき、1音を保持したまま、もう1音を高速に押鍵・離鍵することで得られます。2音の音程差は1~2半音である必要があります。
ミュートストロークは、弾いた直後に手のひら全体を弦に当てて即座にミュートするストロークです。パームミュートより明るく、スクラッチ(マフルドストローク)よりもドライさを抑えた音になります。この効果を再現する方法の一つは、ダウン / アップストロークキー(CまたはD)でコードを弾き、その直後にミュートオールキー(B♭)を非常に素早く弾くことです。
ギター奏者は必ずしもコードの全弦をストロークするわけではなく、ストロークのたびに鳴らす弦の本数を変えることもよくあります。Guitar modeでは、鍵盤から受信するMIDIベロシティに応じて、この点がある程度自動的に反映されます。ただし、より細かくコントロールしたい場合もあります。鳴らす弦の本数を正確にコントロールする方法の一つは、ダウンストローク / アップストロークキーの代わりにアルペジオキーを使うことです。つまり、複数のアルペジオキーを同時に押すことで、鳴らす弦を選んでストロークするという考え方です。これは特定の弦を強調したり、ストロークにバリエーションや表現を加えたりするのにも使えます。この方法と、通常のダウンストローク / アップストロークキーを併用することもできます。
もう一つの方法は、ストロークが完了する前にストラミングキーを離すというものです。こうすることで、まだ弾かれていない弦は鳴らないままになります。つまり、ストラミングキーをスタッカートで弾くと部分的なストロークになり、通常どおり弾くとフルストロークになります。この奏法は、ストラミングの速度が比較的遅いときのほうが行いやすくなります。
ループを使用している場合、ストラム幅(弾く弦の範囲)や高音弦 / 低音弦の強弱バランスに特定のMIDIコントローラーを割り当てることで、3.3節で説明した通り、ストロークの性質をリアルタイムに変化させることもできます。

ベース&コードの例
カントリーやブルーグラスなど特定の音楽ジャンルでは、ベース弦で弾くルート音や5thと、残りの弦のストロークとを切り替えるリズムギターのパターンがよく見られます。この効果を得るには、低音弦がストロークの対象に含まれないようにすることが重要です。Strum GSでこの効果を再現するには、まずベースキーまたはオルタネイトベースキー(EまたはE♭)を弾いて押さえたまま、いずれかのストロークトリガーを弾きます。Strum GSは、ベースキーまたはオルタネイトベースキーが押されている状態でストロークキーが弾かれたことを検出すると、その弦をストロークから除外します。
この奏法は、ギター奏者が2つの音を同時に鳴らしながら、そのうち片方だけをベンドするというものです。Strum GSでは、常に最後に弾いた音だけがベンドされるという性質を利用してこの効果を得ることができます。
Keyboardモードでは、まずベンドしない音を弾き、続けてベンドしたい音を弾きます。その後、ピッチホイールやアフタータッチを操作すると、後から弾いた音だけにベンドがかかります(ただし1~2半音差の音程で弾くと、レガート時に自動的にハンマリングオンやプリングオフが発生してしまうため、この奏法には使えません)。
Guitarモードでは、直前にアルペジオキーでトリガーした弦の音に対して、同様にアフタータッチやピッチホイールでベンドをかけることができます。
参照元情報:AAS Strum GS-2 User Manual
https://www.applied-acoustics.com/strum-gs-2/manual/