はじめに
Symphony I/O MKII Thunderboltを2台ともPCへ接続して使用する場合、それぞれのユニットへ入力された音声をひとつの出力系統にまとめる方法に悩む場面があると思います。
もちろん出力する音声を別のミキサーへすべて送出してしまうことで解決することもできますが、Symphony I/O mkⅡとコアキシャル端子を搭載したケーブルを使用し、S/PDIF形式にて音声を共有することで解決することができます。
Symphony I/O mkⅡの内部DSPミキサーについて
Symphony I/O mkⅡでは、ユニットから出力できる音声は搭載されている内部DSPミキサーを経由したものとなっております。今回は便宜上それぞれのユニットをUnit A/Unit Bと記載しますが、Unit Bから入力された音声をそのままUnit Aから出力するような設定は本体のみでは行えません。
Unit Aからのスピーカー出力はUnit Aのミキサーチャンネルからのみ選択することができます。これは、ヘッドフォン出力(A HP)も同様です。
そして、Unit Bのヘッドフォン出力(B HP)ではUnit Bのミキサーのみが選択可能です。
そのため、Unit Bの内部DSPミキサーから出力する音声をUnit Aへ何らかの形で受け渡す結線が必要となります。
I/Oモジュールに搭載されたS/PDIF端子の仕様について
今回のセットアップでは、細書に記載したとおりUnit Bからの音声出力をUnit Aへ受け渡すためにS/PDIF出力を使用します。
現在販売されているSymphony I/O mkⅡの構成であれば、搭載されているI/Oモジュール全てにS/PDIF規格に対応したコアキシャル端子が搭載れています。
Symphony I/O mkⅡではI/Oモジュール上の任意の隣り合う2つの入力チャンネルをコアキシャル端子からの入力チャンネルに置き換えることや、任意のステレオ出力をコアキシャル端子へミラーリングすることが可能となっています。
この場合、Unit Aには アナログ音声入力が8チャンネルとデジタル音声入力が8チャンネル搭載されており、Unit Bにはアナログ音声入力が16チャンネル搭載されている形となります。これらのアナログ音声入力を、左のパネルにあるコアキシャル端子の設定項目でUnit Aの内部DSPミキサーへすべて入力されるように調整します。
シグナルフローの紹介
つづいて、マルチユニットモードでのシグナルフローについて解説します。
今回は、入力ソースからそれぞれのユニットへI/Oモジュール上のアナログ音声入力チャンネルで送出されていると想定してご案内します。
シグナルフローの設定
今回のセットアップでは、上述の通り2台のSymphony I/O mkⅡ間の音声のやり取りをコアキシャル端子からS/PDIF形式で共有する形を解説いたします。
そのためUnit Bへ入力される音声をコアキシャル端子へ出力することと、その音声をUnit Aにてコアキシャル端子の入力で受ける設定をそれぞれ行っていただく必要があります。
Unit Bの設定について
まずはSymphony Control 上でUnit BのMIXページをご確認ください。
まず、Unit Bのアナログ入力チャンネル1にのみシグナルジェネレータからの音声を入力します。
初期設定ではインプットチャンネルのレベルがすべて0dBに設定されているため、Unit BのMixer 1 マスターチャンネルから同じレベル音声が出力されていることがわかります。同様の設定が他の入力チャンネルでも行われているか確認を行ってください。
この状態でI/Oページへ移り、下段の出力チャンネルのうちUnit Bのアナログ出力チャンネル1および2をUnit B のMixer 1(B Mixer 1)に設定してください。
これでUnit Bのアナログ出力チャンネル1および2からUnit B Mixer 1の音声が出力されるようになります。
S/PDIFのコアキシャル端子は初期設定ではアナログ出力チャンネルの1および2をミラーリングするため、これによりコアキシャル端子から同じようにUnit B Mixer 1の音声が出力される設定となりました。
Unit A の設定について
続いて、Unit Aの設定を行います。
コアキシャル端子でのS/PDIF形式での音声入力については、I/Oモジュールに搭載されているいずれの音声入力を置き換える形で動作します。
Unit Aでは Connect 8x8モジュールを搭載している想定ですので、アナログ音声入力8チャンネルとOptical端子でのADAT/SMUX音声入力が8チャンネル搭載された仕様となっております。
最初に記載したとおりInput Sourceからはすべてアナログでの結線を行いますので、Optical端子を使用したデジタルでの音声入力を使用しません。
そのため、今回はDevice項目にあるUnit Aの"S/PDIF Coax 1-2 Replaces"にて"Optical 7-8"を置き換えました。それにより"A Digital 7-8"が"SPDIF Cx 1-2"に変更され、入力される音声もOptical端子からのものからコアキシャル端子のものへと変更されます。
このとき、終端抵抗が75Ωである同軸ケーブルを使用していない場合は信号の欠損等の要因になる可能性があります。Unit AとUnit Bをつなぐ同軸ケーブルの抵抗値は事前に確認を行ってください。
これでUnit BからS/PDIF形式で出力された音声を受け取る設定となりましたので、"S/PDIF Coax 1-2 Replaces"にUnit Bからの音声が入力されているかを確認してください。
この状態でAのメイン出力チャンネルやヘッドフォン出力チャンネルを"A Mixer 1"に設定すると、Unit Aへ入力される音声と合わせてUnit Bへ入力されているものも聞くことができるようになります。
応用編 - Unit Bからもモニタリングを行う場合の設定や注意事項
同じルーティングはUnit AからUnit Bへも可能であるため、もう1本S/PDIF対応の同軸ケーブルをご用意いただければUnit Bからもモニタリングを行うことができるようになります。
ただしコアキシャル端子からの入力はI/Oモジュールのいずれかを必ず置き換えなければならないため、音声がループしてしまわないようそれぞれのユニットのミキサーチャンネルの設定に注意が必要です。
また、もしどちらかのユニットの入力チャンネル数の関係でI/Oモジュール上の入力チャンネルを置き換えることが難しい場合は、コアキシャル端子を介した設定を行う事ができません。その場合は、レイテンシーが発生するとは思いますがソフトウェアモニタリングにてルーティングを行ってください。
しかし大規模なレコーディングシステムや64チャンネルの音声入力が可能なユニットをご利用いただいているような環境では、このような用途のためにUnit AやUnit B、もしくはその両方に入力チャンネルをステレオ1系統分の余裕をもっているところも多いかと思います。
その場合はこちらの設定を利用してヘッドフォンボックスへの出力を行うことも可能です。