このガイドでは、コンピュータシステムの各ハードウェアコンポーネントに関する情報をご提供します。Native Instruments製品や、他社製のオーディオ関連製品の安定したパフォーマンスに最適なシステムを購入、あるいは自作される際の情報としてお役立てください。
この記事の各章では、各ハードウェアコンポーネントについての一般的な情報だけでなく、推奨されるものについてもご案内しています。各章をクリックすると、対応するセクションが表示されます。
プロセッサ(CPUとも呼ばれます)は、コンピュータシステムの核であり、実行中のアプリケーションやサービスによって要求された指示を調整し、処理する責任を負います。CPUには一つ、もしくはそれ以上のコアが備わっており、キャッシュメモリにデータをあらかじめロードすることによって、次の命令に素早くアクセスすることが可能です。
重要なポイントとして、プロセッサの全体性能はコアの数やクロック速度に正比例して増加するものではありませんのでご注意ください。電力供給、メモリ容量、CPU温度やプロセッサ全体の仕様などの多くの要素が、リアルタイムで計測される処理能力とCPU速度を決定します。プロセッサの実用的な処理能力に関連する複雑な要因を考慮した上で、こちらの記事で解説しているPassmark Softwareウェブサイトで、プロセッサモデルのベンチマークを調べることをお勧めします。
RAM (Random Access Memoryの略称) は、頻繁に使用されるデータを格納するために設計されたメモリモジュールです。オーディオ処理を行う環境においてこれは、オーディオアプリケーション、シーケンサー、プラグインやオーディオサンプルなどのソフトウェアデータを、CPUがハードドライブにアクセスせずに直接ロードできるということになります。CPUはソフトウェアと直接通信することはありません。代わりにRAMモジュールがソフトウェアとプロセッサ間の仲介として、全てのデータをやり取りします。
システムが受け入れ可能なRAMメモリの量は、次の二つの要因によって決まります:システムアーキテクチャと、コンピュータのマザーボードの物理的なレイアウト。システムアーキテクチャの標準である64ビットでは、必要に応じてRAMを追加できます。32ビットアーキテクチャでは、最大4GBまでのRAMしか利用できません。コンピュータのマザーボードには、特定の量のRAMメモリスロットが装備されています。ノートパソコンのマザーボードはハードウェアレイアウトが統合され、スペースが少ないため、スロット数が少ない傾向があります。
RAMモジュール(DIMMモジュールとも呼ばれます)は、ほとんどのマザーボードに装着可能です。マザーボードのモデル/シリアル番号をインターネットで検索し、製造メーカーの仕様ページにて、システムに追加可能なRAMの容量をご確認ください。特定メーカーの特定のシステムモデルを調べたい場合は、Crucialウェブサイトが提供しているツールのご使用をお勧めします。
マザーボードにRAMモジュールを追加される場合、システムの処理能力低下やRAMモジュールが認識されないといった問題を避けるため、以下の点を考慮してください:
ハードドライブはシステムの記憶装置です。RAM、キャッシュやオペレーティングシステムは、ディスク内部に格納されたデータを取り出すことが可能です。
現在、業界標準のハードドライブはHDDとSSDです。(下記参照)
ハードドライブは内蔵と外付けがあります。外付けハードドライブは通常、USB / Firewire / Thunderboltを介して接続します。現在、最高のパフォーマンスを発揮するインターフェースであるUSB 3.0とThunderboltのデータ転送速度とパフォーマンスに関して、両者の違いはほとんどありません。一方、内蔵ハードドライブはコンピュータのマザーボード上に直接設置されています。内蔵ハードドライブのデータ転送速度は外付けハードドライブと比較して顕著な違いはありません。内蔵ハードドライブとマザーボードを接続する標準インターフェースは、SATA(Serial ATA)です。
HDDはこれまで長い間、業界標準でした。磁気スピンドル(またはディスク)に格納するデータを機械ヘッドによって読み/書きします。HDDは、小さなサイズと低コストで大量の記憶領域を提供するという点で、SSDドライブ(下記参照)よりも優れた選択肢です。
SSDは集積回路を使用してデータを保存します。機械的に動作する部品がないため、SSDはHDDと比較してアクセス時間が非常に早く、衝撃や振動にも耐性があります。さらにSSDドライブはノイズを発生させず、全体的にエネルギー効率を向上させます。しかしSSDは新しい技術であるため、記憶容量とサイズの関係におけるコストはまだかなり高いのが現状です。システムのBIOSによってはSSDと互換性がない場合がありますので、内蔵ドライブをSATAポートにマウントする前にシステムの製造元にご確認ください。
最後に、一部の「ハイブリッド」ドライブモデルでは、SSDとHDDドライブを一つのユニットに組み込んでいます。多くの場合、SSDパーティションはオペレーティングシステムデータの高速キャッシングに使用されます。 ハイブリッドドライブでNative Instruments製品を操作することは可能ですが、代わりに別のドライブを使用することをお勧めします。
複数のハードドライブを搭載したシステムを購入または自作される場合は、以下をお勧めします:
また、以下の推奨事項をご確認ください:
一般に、外部デバイス(オーディオインターフェース/MIDIコントローラー)には、USB 2.0/3.0やThunderbolt接続が必要です。
Thunderboltの転送速度はUSB 2.0/3.0よりも上ですが、実質的な性能にほとんど差はありません。
注意:一部のWindowsコンピュータメーカー(特にノートパソコン)では、低品質のUSBドライバ/コントローラーを装備している場合や、同じUSBコントローラーが内部的に他のリソースを共有している場合があります。周辺機器のレイテンシーを減らすためには、オーディオ処理のためのWindows最適化の4.5. 電源オプションを参照し、ご使用システムを診断、設定する方法をご確認ください。
グラフィックスカードまたはGPU(Graphic Processing Unit)は、リアルタイムオーディオ処理において最も重要ではないコンポーネントです。このため、ハイエンドモデルではなく、できるだけリソースを消費しないモデルをお探しください。GPUはマザーボードに統合することも、外部コンポーネントとして実装することも可能です。
平均的なモデルでも問題はありませんが、以下の点を考慮してください:
独自のシステム(デスクトップワークステーション)をゼロから自作される場合は、このシステムコンポーネントを詳細にご確認ください。マザーボードにはメモリ、CPU、RAM、その他のオプション間の通信を調整する特定のチップセットが搭載されています。
適切なマザーボードを探す場合は、効率と他のハードウェアコンポーネントとの互換性に関して、以下の点を考慮してください:
良い筐体デザインはノイズと熱を最小限に抑えます。気流と騒音と振動に対する絶縁性を確保する筐体デザインをお探しください。冷却ファンが装備されている筐体もあります。筐体内部に高温の空気を分散させるものではなく、ファンの量と位置によって冷たい空気が流入し、筐体から高温の空気が流出することをご確認ください。
電源ユニットシステムの全体的な性能において重要な役割を果たす、見落とされがちなコンポーネントです。電源はノイズレベルを可能な限り低く抑えながら、システムのすべてのコンポーネントに十分かつ一定量の電力を供給する必要があります。ご使用システムの各コンポーネントの電力要件の合計を確認するには、専門家にご相談ください。
注意:多くのメーカーが、リアルタイムオーディオ処理のために特別に設計されたデスクトップ、ラップトップ、ラックコンピュータを提供しています。インターネット検索で「オーディオ」「リアルタイム」「低レイテンシ」「コンピュータ」「システム」「DAW」「ショップ」「カスタマイズ」などの言葉を組み合わせてお探しください。