コンピュータハードウェアコンポーネントに関するNative Instrumentsガイド

コンピュータハードウェアコンポーネントに関するNative Instrumentsガイド

コンピュータハードウェアコンポーネントに関するNative Instrumentsガイド


このガイドでは、コンピュータシステムの各ハードウェアコンポーネントに関する情報をご提供します。Native Instruments製品や、他社製のオーディオ関連製品の安定したパフォーマンスに最適なシステムを購入、あるいは自作される際の情報としてお役立てください。

この記事の各章では、各ハードウェアコンポーネントについての一般的な情報だけでなく、推奨されるものについてもご案内しています。各章をクリックすると、対応するセクションが表示されます。

プロセッサ

プロセッサ(CPUとも呼ばれます)は、コンピュータシステムの核であり、実行中のアプリケーションやサービスによって要求された指示を調整し、処理する責任を負います。CPUには一つ、もしくはそれ以上のコアが備わっており、キャッシュメモリにデータをあらかじめロードすることによって、次の命令に素早くアクセスすることが可能です。

重要なポイントとして、プロセッサの全体性能はコアの数やクロック速度に正比例して増加するものではありませんのでご注意ください。電力供給、メモリ容量、CPU温度やプロセッサ全体の仕様などの多くの要素が、リアルタイムで計測される処理能力とCPU速度を決定します。プロセッサの実用的な処理能力に関連する複雑な要因を考慮した上で、こちらの記事で解説しているPassmark Softwareウェブサイトで、プロセッサモデルのベンチマークを調べることをお勧めします。

推奨

  • 少なくとも4つのコアとハイパースレッディング機能を備えたIntelもしくはAMDプロセッサ。
  • 複数のアプリケーションを並列に実行する大規模なプロジェクトには、Turbo Boostテクノロジーやハイパースレッディング機能を備えた8コア搭載のIntelもしくはAMDプロセッサ。プロセッサに効率的なヒートシンクが装備され、コンピュータの筐体が効率的に冷却されることをご確認ください。(筐体を参照)

メモリ

RAM (Random Access Memoryの略称) は、頻繁に使用されるデータを格納するために設計されたメモリモジュールです。オーディオ処理を行う環境においてこれは、オーディオアプリケーション、シーケンサー、プラグインやオーディオサンプルなどのソフトウェアデータを、CPUがハードドライブにアクセスせずに直接ロードできるということになります。CPUはソフトウェアと直接通信することはありません。代わりにRAMモジュールがソフトウェアとプロセッサ間の仲介として、全てのデータをやり取りします。

システムが受け入れ可能なRAMメモリの量は、次の二つの要因によって決まります:システムアーキテクチャと、コンピュータのマザーボードの物理的なレイアウト。システムアーキテクチャの標準である64ビットでは、必要に応じてRAMを追加できます。32ビットアーキテクチャでは、最大4GBまでのRAMしか利用できません。コンピュータのマザーボードには、特定の量のRAMメモリスロットが装備されています。ノートパソコンのマザーボードはハードウェアレイアウトが統合され、スペースが少ないため、スロット数が少ない傾向があります。

RAMモジュール(DIMMモジュールとも呼ばれます)は、ほとんどのマザーボードに装着可能です。マザーボードのモデル/シリアル番号をインターネットで検索し、製造メーカーの仕様ページにて、システムに追加可能なRAMの容量をご確認ください。特定メーカーの特定のシステムモデルを調べたい場合は、Crucialウェブサイトが提供しているツールのご使用をお勧めします。

推奨

  • オーディオワークステーション(例:MASCHINEを含むシーケンサーでKOMPLETE製品をプラグインとして使用する)としてシステムを使用する場合、RAMを追加してください。
  • サンプルベースの製品(KONTAKT、BATTERY、POLYPLEXなど)を使用するには、少なくとも8GBのRAMをご使用ください。
  • 大規模なアレンジメントプロジェクト(ホストシーケンサーで多くのプラグインを実行)内でサンプルベースの製品を使用するには、少なくとも16GBのRAMをご使用ください。

マザーボードにRAMモジュールを追加される場合、システムの処理能力低下やRAMモジュールが認識されないといった問題を避けるため、以下の点を考慮してください:

  • 同じメーカーの同じモデルのメモリモジュールをご使用ください。
  • 同じ容量のメモリモジュールを追加してください。例えば8GBに増設したい場合、2GBを2つと4GBを1つではなく、4GBを2つ追加してください。

ハードドライブ

ハードドライブはシステムの記憶装置です。RAM、キャッシュやオペレーティングシステムは、ディスク内部に格納されたデータを取り出すことが可能です。

現在、業界標準のハードドライブはHDDSSDです。(下記参照)

ハードドライブは内蔵と外付けがあります。外付けハードドライブは通常、USB / Firewire / Thunderboltを介して接続します。現在、最高のパフォーマンスを発揮するインターフェースであるUSB 3.0とThunderboltのデータ転送速度とパフォーマンスに関して、両者の違いはほとんどありません。一方、内蔵ハードドライブはコンピュータのマザーボード上に直接設置されています。内蔵ハードドライブのデータ転送速度は外付けハードドライブと比較して顕著な違いはありません。内蔵ハードドライブとマザーボードを接続する標準インターフェースは、SATA(Serial ATA)です。

HDD (ハードディスクドライブ)

HDDはこれまで長い間、業界標準でした。磁気スピンドル(またはディスク)に格納するデータを機械ヘッドによって読み/書きします。HDDは、小さなサイズと低コストで大量の記憶領域を提供するという点で、SSDドライブ(下記参照)よりも優れた選択肢です。

SSD (ソリッドステートドライブ)

SSDは集積回路を使用してデータを保存します。機械的に動作する部品がないため、SSDはHDDと比較してアクセス時間が非常に早く、衝撃や振動にも耐性があります。さらにSSDドライブはノイズを発生させず、全体的にエネルギー効率を向上させます。しかしSSDは新しい技術であるため、記憶容量とサイズの関係におけるコストはまだかなり高いのが現状です。システムのBIOSによってはSSDと互換性がない場合がありますので、内蔵ドライブをSATAポートにマウントする前にシステムの製造元にご確認ください。

最後に、一部の「ハイブリッド」ドライブモデルでは、SSDとHDDドライブを一つのユニットに組み込んでいます。多くの場合、SSDパーティションはオペレーティングシステムデータの高速キャッシングに使用されます。 ハイブリッドドライブでNative Instruments製品を操作することは可能ですが、代わりに別のドライブを使用することをお勧めします。

推奨

複数のハードドライブを搭載したシステムを購入または自作される場合は、以下をお勧めします:

  • 全てのアプリケーションデータ保存用にSSDドライブをご使用ください;つまり、全てのNIアプリケーションやホストシーケンサーを含む他社製サードパーティアプリケーションをSSDにインストールします。
  • (外付け)HDDドライブはコンテンツ(楽曲ファイル、オーディオサンプルなど)保存用にご使用ください。

また、以下の推奨事項をご確認ください:

  • 外付けハードドライブを使用する場合、USB 3.0またはThunderbolt経由で接続するものをお選びください。これらのインターフェースは、eSATAポート(内蔵ハードドライブ)と同等以上の性能を実現します。
  • HDD記憶装置の場合、回転速度が7200 RPMのモデルをお選びください。5400 RPMの速度は、旧式のデータ転送インターフェース(USB 2.0、FIrewire 400/800)との組み合わせに適しているものです。
  • 会場やフェスティバルでコンピュータ(ノートパソコン)を使用するTRAKTORユーザーやライブパフォーマー(例:MASCHINE JAM)の場合、衝撃に強いSSDドライブにデータ(楽曲ファイル、プロジェクトなど)を保存することをお勧めします。

入出力コンポーネント

一般に、外部デバイス(オーディオインターフェース/MIDIコントローラー)には、USB 2.0/3.0やThunderbolt接続が必要です。
Thunderboltの転送速度はUSB 2.0/3.0よりも上ですが、実質的な性能にほとんど差はありません。

推奨

  • Native Instrumentsハードウェアデバイス(オーディオインターフェースとコントローラーの両方)はUSB 2.0データ転送を使用しますが、USB 3.0ポートとも完全に互換性があります。それでも、特に旧式のNative Instrumentsデバイスをご使用の場合は、システムに少なくとも1つのUSB 2.0ポートを装備することをお勧めします。
  • 近代的な外付けハードドライブとの効率的なデータ交換のために、USB 3.0もしくはThunderboltポートを使用することをお勧めします。これにより、高速の双方向データ交換の恩恵を受けることができます。外部デバイスは、USB 3.0 / Thunderboltプロトコルと互換性がある必要がありますのでご注意ください。

注意:一部のWindowsコンピュータメーカー(特にノートパソコン)では、低品質のUSBドライバ/コントローラーを装備している場合や、同じUSBコントローラーが内部的に他のリソースを共有している場合があります。周辺機器のレイテンシーを減らすためには、オーディオ処理のためのWindows最適化の4.5. 電源オプションを参照し、ご使用システムを診断、設定する方法をご確認ください。

グラフィックカード

グラフィックスカードまたはGPU(Graphic Processing Unit)は、リアルタイムオーディオ処理において最も重要ではないコンポーネントです。このため、ハイエンドモデルではなく、できるだけリソースを消費しないモデルをお探しください。GPUはマザーボードに統合することも、外部コンポーネントとして実装することも可能です。

推奨

平均的なモデルでも問題はありませんが、以下の点を考慮してください:

  • 「共有メモリ」の仕組みで動作するカードではなく、独自のメモリモジュールを備えたGPUをご使用ください。
  • 一部のPCメーカーでは、オーディオ関連製品のパフォーマンスに悪影響を及ぼす、独自のグラフックカード用設定ツールを提供しています。詳しい情報に関しては、こちらの記事の「グラフィックカードツール」セクションをご参照ください。
  • Appleの一部のシステムでは、オーディオ関連製品の性能に悪影響を及ぼす「グラフィックスの自動切り替え」オプションがあります。詳しい情報に関しては、こちらの記事の「グラフィック・カードの切替」セクションをご参照ください。

マザーボード

独自のシステム(デスクトップワークステーション)をゼロから自作される場合は、このシステムコンポーネントを詳細にご確認ください。マザーボードにはメモリ、CPU、RAM、その他のオプション間の通信を調整する特定のチップセットが搭載されています。

推奨

適切なマザーボードを探す場合は、効率と他のハードウェアコンポーネントとの互換性に関して、以下の点を考慮してください:

  • 効率的な放熱(ヒートシンク)
  • 他のコンポーネント(主にRAMとCPU)とのデータボトルネックを回避するために十分なバス速度/帯域幅とチップセット性能
  • ご使用のCPUモデルに対応したCPUソケット
  • ご使用のRAMモジュールの容量、クロック速度、チャンネルアーキテクチャに対応したDIMMメモリースロット
  • ご使用の記憶装置/DVDドライブに対応したSATAポートと転送速度
  • 使用するUSBまたはThunderboltデバイスに相当する数のUSBまたはThunderboltポート

筐体

良い筐体デザインはノイズと熱を最小限に抑えます。気流と騒音と振動に対する絶縁性を確保する筐体デザインをお探しください。冷却ファンが装備されている筐体もあります。筐体内部に高温の空気を分散させるものではなく、ファンの量と位置によって冷たい空気が流入し、筐体から高温の空気が流出することをご確認ください。


電源ユニット(PSU)

電源ユニットシステムの全体的な性能において重要な役割を果たす、見落とされがちなコンポーネントです。電源はノイズレベルを可能な限り低く抑えながら、システムのすべてのコンポーネントに十分かつ一定量の電力を供給する必要があります。ご使用システムの各コンポーネントの電力要件の合計を確認するには、専門家にご相談ください。

注意:多くのメーカーが、リアルタイムオーディオ処理のために特別に設計されたデスクトップ、ラップトップ、ラックコンピュータを提供しています。インターネット検索で「オーディオ」「リアルタイム」「低レイテンシ」「コンピュータ」「システム」「DAW」「ショップ」「カスタマイズ」などの言葉を組み合わせてお探しください。